恋のレシピの作り方
「あ、ありがとう……ちょっとね、気分変えてメイクしてみたの」


 普通の女性なら相手が恋人でなくても、きちんとメイクはするのだろう。けれど、奈央は心のどこかでなんでも仕事のせいにしていた。


「こうしてると、俺たち付き合ってた時みたいな気分になってくるよ」

「え……?」


 桐野は自分が欲しかった言葉を何度もくれる。そして、その言葉に癒されそうになっている自分がいる。けれど、たとえ一時の気の迷いだったとしても、その気分に惑わされてはいけない。


 奈央は心の中で何度も自分に言い聞かせた。
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