恋のレシピの作り方
 何年かぶりに会う桐野は当時とは違い、すっかり父親の顔になっていた。

「久しぶりだな! 元気だったか? なに、奈央はここに泊まってるの?」

「ううん、私、アルページュで働いてるの」

「ええ!? あのアルページュで? すごいじゃないか、頑張ったんだな……俺はさぁ、何年か厨房で働いたけど、やっぱり才能がないってわかって、今は普通の会社員」

 

 そして、結婚して子供もできました。

 と言わんばかりに照れ笑いながら娘を愛おしそうに見下ろす。

(こんな顔……する人だったんだ、きっともう私の知ってる桐野君じゃないんだね)
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