恋のレシピの作り方
「あの、奈央の上司の人……一条さんだっけ? その人と付き合ってたりするの?」

 桐野はグラスに両手を添え、視線を奈央に向けずにじっとグラスを見つめていた。

「え? な、何言ってるの? 一条さんは……ただの上司だよ」


 そう自分で言ってて切なくなる―――。


「そうなんだ、ほら、もしさ、彼氏だったら……こうやって飲みに誘うのも悪いかと思って」

「……ほんとに、彼氏とかじゃないから」

「そっか、じゃあ安心した」

 パッと表情が明るくなった桐野が奈央に向き直った。

 本当にそんな事に引け目を感じているのだろうか? と思うと奈央は素直に笑顔で返すことができなかった―――。
< 255 / 457 >

この作品をシェア

pagetop