恋のレシピの作り方
「やっぱりここにいた」


「!?ッ」


 突然背後から声をかけられて、涙でぐちゃぐちゃになった顔を拭うのも忘れ振り向いた。

(誰……?)

 おもむろに黒い人影が近づいて微量の灯りに照らされると、その全貌が鮮明になり、奈央はその姿に息を呑んだ。

「い、一条……さん? どうして?」


「ぷっ……お前、今自分がどんな顔してるかわかるか?」


「わか……てます」


 一条はいつものように腕を組みながら、奈央を見据えていた。
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