恋のレシピの作り方
「一条さ―……――」

 奈央は驚いて思わず身体を仰け反らせて離れようとするが、一条はそれをも許さず、離れた唇を追いかけるように再び唇を重ねてくる。


 一条の怒りにも似た激情が、唇を伝って奈央の身を震わせた。


「本当のお前を知ってるのは、俺だけだ」


 一条は奈央のルージュを拭うように口づけを何度も繰り返した。


「は……ぁ」


 唇の間にできた小さな隙間から、奈央は喘ぐように呼吸をする。瞼をうっすら開くと、今まで見たこともないような切なさに打ちひしがれた一条の瞳があった。
< 276 / 457 >

この作品をシェア

pagetop