恋のレシピの作り方
「アデール国際料理コンクールの写真でしょ? 彼はね、二十五歳の時にフレンチ部門で優勝したのよ」


「二十五歳で?」


「そう、史上最年少の優勝者って言われてすごく注目を浴びたの、私はそんな輝いてる彼に夢中になった、何度もパリに足を運んで会いに行ったわ」


「そう、ですか……」


 ―――この人は自分の知らない一条を知っている。そして自分の知らない一条の過去を知っている。

 そう思うと奈央の心に沸々と黒いものが湧いて滲んできた。
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