恋のレシピの作り方
 ピーっと、無機質な機械音が再生終了を知らせると、先日桐野との出来事を思い返していた。

 桐野と一緒にいる空間、時間……。奈央にとっては失いたくはない、けれど、なにか歯車が狂い出し始めている……。そんな予感がして、奈央は留守電のメッセージを消去した。


 (桐野君とは、いい友達でいたい……―――)

 あんな出来事があっても、心のどこかでそう思っている自分がいた。

 桐野のことを思えば思うほど、一条のことばかり考えてしまう。

 (一条さん……)

 奈央は無意識に電話の受話器に手を伸ばした。今、自分が一番電話をかけたい相手、それは―――。
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