恋のレシピの作り方
「ふん、勝手にライバル視してたのは向こうだ」


「でも、盗作の可能性は否めませんよ……!?」


「おい、馬鹿、声がでかい」


 一条に制され、失態を咳払いで気を取り直すと、羽村は口を噤んだ。


「……すみません」


「とにかく、このことはまだおおっぴらにしないでくれ、こんなくだらないことで、従業員の混乱させたくない」


「それはそうですが、打つ手は早いほうが―――」

 それでも食い下がる羽村に、一条はこれ以上聞く耳持たない、と手を軽くあげて席を立つと、ドアに向かって歩き出した。


「……分かりました」


 内心の苛立ちを隠せないまま、一条は休憩室のドアを力任せに閉めた。ドアの閉まる音が荒々しく背中に響くと、踵を鳴らして一条の足は厨房とは別の場所に向かっていた―――。


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