恋のレシピの作り方
 たいして旨みを感じられなかった煙草の火種を灰皿に押し付けて、もう一本煙草を取り出そうとするが、思いとどまってその手を止めた。そして、鬱々としている気分を振り払うように、乱暴に頭を掻いて一条は部屋に戻ることにした。


「いって! ―――……ん?」


 部屋に入って、一歩踏み出した拍子に小さなゴミ箱に足がつっかかる。
 
 顔をしかめて散らばった中身を見下ろすと、普段使わないゴミ箱から、ぐちゃぐちゃに丸められた紙の塊に目が留まる。一条は無意識にそれを拾い上げると、手にとって広げた。


「……馬鹿女」
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