恋のレシピの作り方
―――この女は一体何をしようとしている……? どうして、この女がここにいる……?
そう思うと、ふと浮かぶのは厨房であくせく働く春日奈央の姿だった。そして気がつけば、仕事に集中できなくなるくらい、気になって仕方がなくなっていた。一条は、そんな自分をずっと否定し続けていたが、己の気持ちを誤魔化し続けることは、なによりも難しいと悟った。
麗華の姿を見るたびに、一条は奈央のことを考えずにはいられなかった。
「っ……」
我に返って、目を反らす一条を捕らえるように、麗華はその手を取って自らの胸元に導こうとした。
「離せ!」
一条は捕られた手を振り払うと、その場を立ち上がって部屋を出ていこうとする。
「待って!」
麗華の呼び止める声を背中で捉え、一条は反射的にその足を止めた。そして次の瞬間、背中に小さな衝撃と、温かな感触がした。
麗華は、はだけた胸元を直すこともせず、そのまま一条の広い背中にしがみついた。
「お願い、行かないで、私、私……司の事、まだ愛してるの」
背後から聞こえてくる震える声に、一条は表情を崩すことなく、ただ目線の先のドアを見つめた。身体に麗華の腕が絡みついるのがわかったが、一条は重ねることも、触れることもせずに、ただ時が過ぎるのを待っていた。
そう思うと、ふと浮かぶのは厨房であくせく働く春日奈央の姿だった。そして気がつけば、仕事に集中できなくなるくらい、気になって仕方がなくなっていた。一条は、そんな自分をずっと否定し続けていたが、己の気持ちを誤魔化し続けることは、なによりも難しいと悟った。
麗華の姿を見るたびに、一条は奈央のことを考えずにはいられなかった。
「っ……」
我に返って、目を反らす一条を捕らえるように、麗華はその手を取って自らの胸元に導こうとした。
「離せ!」
一条は捕られた手を振り払うと、その場を立ち上がって部屋を出ていこうとする。
「待って!」
麗華の呼び止める声を背中で捉え、一条は反射的にその足を止めた。そして次の瞬間、背中に小さな衝撃と、温かな感触がした。
麗華は、はだけた胸元を直すこともせず、そのまま一条の広い背中にしがみついた。
「お願い、行かないで、私、私……司の事、まだ愛してるの」
背後から聞こえてくる震える声に、一条は表情を崩すことなく、ただ目線の先のドアを見つめた。身体に麗華の腕が絡みついるのがわかったが、一条は重ねることも、触れることもせずに、ただ時が過ぎるのを待っていた。