恋のレシピの作り方
 羽村は涼しい顔をしながら、料理を口に運んでいる。奈央はぎこちない手つきでグラスを手にしようとしたが、小刻みに指先が震えているのに気がついて、その手を止めた。
 なんとか気持ちを抑えて飲み物を口にすると、渇ききった喉がスっと潤う。けれど、沸き起こる焦燥感に奈央は平静を保てずにいた。すると―――。


「春日さん、あなたなら、お気づきでしょう? 私はそのためにあなたをここに連れてきたのですから」


「え……?」


「アルページュのメニューと似ている……そう思ったんじゃないですか?」


「そ……それは」


 心の中を見透かすような羽村の視線に、奈央は目をそらす術を失った。
< 348 / 457 >

この作品をシェア

pagetop