恋のレシピの作り方
「あ……これって」



 アルページュの記事が載っている次のページには、先日、羽村と訪れたフレンチレストラン、ヴェルテのことが載っていた。奈央は思わずそのページに目が留まった。

 ―――注目の新作レシピ 白身魚のポワレ

 フレンチでポワレの調理方法は有名だが、それをアレンジして創作するシェフは多い。奈央はそのポワレのレシピに頷きながら、清家のシェフとしてのセンスを分析していく。


(清家悟ってこの人か……このポワレ、なかなか考えてるな)

 
 さすがフレンチ界切ってのアルページュと並ぶ強豪なだけある。と奈央が感心していると、そこにヴェルテのオーナーシェフと紹介されている清家の写真があった。
 一条よりも少し年は上だろう。神経質そうな顔立ちをしていて、実際に会ったら思わず背筋を伸ばしてしまいたくなるような雰囲気を持っている。


(一条さんの……ライバル)

 羽村の言葉が脳裏に過ぎって、目に焼き付けるように写真を見つめると、奈央は思い立ってパソコンの電源を入れた。



(まずはこの人がどんな人なのか調べなくちゃ)


 敵を知ることは作戦のうち。奈央はテレビや雑誌で見かけたことのある清家の姿と重ね合わせながら、キーボードに指を滑らせた。
< 360 / 457 >

この作品をシェア

pagetop