恋のレシピの作り方
 ―――田川出版 編集部 部長 田川麗華。



「あ、ありがとうございます、すみません」


 生田はその名刺を受け取ると、奈央の強ばった表情に気づくことなく背を向けた。


(ど、どういう……こと? でも、生田君にだって取材が来るかもしれないし……でも、やっぱりそんなはずない)


 混乱する頭を抱えながら奈央はとにかく落ち着こうと、従業員用の冷蔵庫からペットボトルをひったくるように取り出すと、それを勢いよく煽った。
 緊張で今にもへばりつきそうな喉の奥が一気に満たされるが、一切の清涼感を感じることはできなかった―――。
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