恋のレシピの作り方
「あ、一条さん、探して―――」

 ようやく厨房に戻ってきた一条の表情を見るなり、奈央は言葉を呑んだ。
 喜怒哀楽のわかりにくい一条の周りに、珍しくはっきりとわかる不機嫌なオーラが立ち込めていた。

「これは……支配人とやり合いましたね」

「え……?」

 いつの間にか横に立っていた羽村がぼそっとつぶやくように言った。

(一条さん……何があったんだろう)

 その表情からは怒りしか窺えない。奈央は声をかけることもできずに、ただ一条を、遠くから見つめていた。



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