恋のレシピの作り方
第二十五章 消えゆくレシピ
 ―――奈央はホテルの屋上へ来ていた。

(一条さん……!)

 エレベーターを待つ時間ももどかしくて、階段を使って上がってきた。今にも詰まりそうな乱れる息を整え、屋上のドアを勢いよく開いた。そして、外にでた瞬間、目の前がオレンジ色に染まった。

 ―――この街の夕暮れは美しい、美しいからこそ心によく染みる。

 それは骨の髄まで染み込んでいくような黄昏時だった。
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