恋のレシピの作り方
「ダメ……!! なにしてるんですか!」

(いや、いやいやいや……! 一条さんのレシピなのに!)


 一条の命を注ぎ込んだレシピが、破かれ風に消されて、なにもかもが自分の目の前から消えてしまいそうで、奈央は気がついたら、一条の腕にしがみついていた。

「お、おい……なんだよ、急に」


「やめてください! こんなこと」

 まだ足元に残っている紙の欠片を、奈央は膝をついてかき集め始めた。


「これはもうただの紙クズだ。そんなことしても―――」



「だったら、そんな辛そうな顔しないでください!」

 一条の言葉を断ち切って、奈央は無我夢中で破かれてあちこちに散乱しているレシピの欠片を拾い集めた。



「紙クズ」と蔑んでいる割には、破いている時の一条が泣いているように見えて、奈央は耐えられなかった。
< 381 / 457 >

この作品をシェア

pagetop