恋のレシピの作り方
「いらっしゃいま……あれ？　君は確か……」



　奈央は以前、一条に連れられてきたジャズバーbrillant＜ブリアン＞に来ていた。


「すみません、突然お邪魔して。春日です……覚えてますか？　今日は一人なんですけど…」

　
「こんな可愛い子、忘れるわけないでしょ？　さ、座って座って」

　奈央がはにかみながら言うと、店長の北川はにっこり笑って、カウンターのスツールに座るように促した。



　店内にはサックスの音色が響き渡って、天井にはセーリングファンが回っていた。以前来たときは、あまり店内を物色する余裕もなかったが、よく見ると結構クラシックな内装だった。



「でも、また来てくれるなんて嬉しいよ、司もよく来てくれるけどね～男相手に何時間もって色気なさすぎでしょ」

　北川の軽い冗談に、奈央の肩から徐々に力が抜けていって自然と笑顔になる。奈央はこのバーの雰囲気が結構気に入っていた。静かに流れるジャズが大人の雰囲気を醸し出して、不思議と身体が癒えていく気がした。だからなんの隔たりもなく一人で来てしまったのだろう。


　奈央は軽めのリキュールを頼んで一息ついた。
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