恋のレシピの作り方
「冗談だよ、君は本当に可愛い人だな、で? 本当は何かあったんでしょ?」


 北川は最初から奈央の様子を察して、様子を見ながら話を切り出そうとしていたのかもしれない。その気遣いに気づいて、奈央は逆に申し訳なく感じてしまった。

 なんて切り出そうかしばらく考えたあと、奈央は口を開いた。

「ちょっと、仕事で……色々あって……私、どうやったら一条さんの力になれるかずっと考えてるんです」

 
「え? 司の?」

 意外な悩みが飛び出して、北川は意表をつかれたように目を丸くしながら言った。そして、カウンター周りを片付けたあと、冷蔵庫からビールを取り出しながら言った。


「うーん、そうだなぁ……何があったか知らないけど、先日司が来た時、ちょっと様子変だなとは思ったんだけどね~確かあれは……」

 北川は顎に指をあてがい首をひねって、それがいつの事だったか思い出してた。


「一条さんが?」


「なんか、思い詰めた感じだったけど……あいつらしくもなく、なんか意気消沈した感じだったな」



 奈央の脳裏に一条のその表情が浮かび上がる。一条はやはり一人で何かを思い詰めて、そして誰にも何も言えずに殻に閉じこもってしまっているのだ。

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