恋のレシピの作り方
「……奈央」

 初めて呼ばれた名前が奈央の心に甘美に響くと、この上ない悦びに身体が震えた。そして、どちらからともなく唇を寄せ合うと、温かく柔らかな感触が唇を覆った。

 覆われた唇が震えている。それが一条のものなのか、自分のものなのかさえわからない。お互いに重ねる唇が、次第に熱を持ち始めてくる。

「……は、ぁ」

 重なる唇の僅かな隙間から喘ぐように息をすると、再び覆われて思わず鼻から甘い声が漏れそうになってしまう。貪るような一条の口づけは、獰猛で情熱的だった。
 ようやく唇が離れると、真っ赤な顔をした奈央がおかしかったのか、一条はクスリと笑った。



「お前にこうやって口づけたの、これで、三回目だな……でも、なんだか初めてキスしたみたいに新鮮だ」


「一条さん……」


「一回目は俺の心の中を震わせたお前が悪い、二回目は……馬鹿な男の嫉妬心だ」

「嫉妬……?」

 二回目は確か、似合いもしないルージュを拭うように口づけられた。

「一条さん……あの時、やきもち妬いてたんですか?」

「……もういいだろ、黙ってろ」


 そう言いながら一条の頬に赤みが刺したかと思うと、奈央の言葉を飲み込んで、唇を押し付けた。それは想いの全てを奈央に刻み込むかのような甘い口づけだった。
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