恋のレシピの作り方
「生田君……大丈夫でしょうか」

　
　奈央は熱でもあるのではないかと懸念していたが、羽村の表情にはうっすらと意味ありげな笑みが浮かんでいた。


「羽村さん……？」


「へぇ、気分が優れなくて……ですか、女の香水がプンプン匂ってきましたけどね、優れない体調でどこで何をしていたんだか……」

　そういえば、生田が傍にきた時一瞬、どこかで嗅いだことのある香水の匂いがしたような気がした。けれど、奈央は制汗剤かなにかと思い、その時は気に留めていなかった。

（あの匂い……どこかで）

　もう一度嗅げばもしかしたら思い出すかもしれないと思ったが、奈央は羽村の口元に浮かんだ含み笑いの意味の方が気にかかっていた。

「羽村さん、考え過ぎですよ」

　奈央は空元気に笑うと、羽村はいつもの表情に戻っていた。

「そうですね、考えすぎかもしれません……けれど、人を疑うのは、私の仕事ですから……」

　そう言って、にこやかに笑うと羽村はその場を立ち去った―――。
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