恋のレシピの作り方
「麗華さん、まさか……一条さんのレシピ盗んでるのは―――」


「盗むですって? 人聞きの悪いこと言わないでくれる? 私は、私はただ―――」


「返して」


 奈央は言い逃れの言葉を探している麗華にすかさず言葉をかぶせた。追い詰められた麗華の表情からは焦りの色が覗える。



「どうして……? 麗華さんは、一条さんのこと―――」



「好きよ、今でも愛してる……でもね、私、結婚するの」


「え……?」



 突然の告白に奈央は瞠目した。両腕をかき抱くようにしている麗華は全てのことから身を守ろうとしているように見えて、奈央は言葉を紡ぐことができなくなった。


「相手は清家悟よ、あなたも知ってるでしょ? ヴェルテのオーナーシェフ」


「……」

 麗華は複雑な表情で鬱陶し気に髪の毛をかきあげる。


 
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