恋のレシピの作り方
「残念ながら、一見華やかに見えるこのような料理世界にも、利益や栄光に目がくらんだ虫けら同然の下衆が山のように巣食っているんです。盗作は典型的な犯罪ですが、水面下で動いてこのような輩を一掃するのが、本来の私の仕事です」



 思い起こせば、羽村はいつも休憩室で書類を整理したりしてて、特にレシピを作成しているわけでもなかったが、いつも忙しそうにしていた。

 ―――人を疑うのが私の仕事。

 その時、いつか羽村が言っていた言葉をふと、思い出した。

(そうか……そういうことだったんだ)



 今なら全て合点がいく。



「ですが、今回は春日さんのお陰で、清家が盗作を促していた証拠も揃いました。これで、警察と連携して調査を進めることができます」



「お陰でって、こいつは怪我したんだぞ!」


「それは、あなたの力量不足では?」

 不謹慎な物言いに一条が言葉を挟むと、横目で鋭く睨んだ。

 少なからず痛いところを突かれて一条は閉口すると、面白くなさそうに鼻を鳴らしてソファにどかりと腰を下ろした。



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