恋のレシピの作り方
 駅前の時計台は、今も変わらずあの頃のままだった―――。

「奈央! ごめん! 待ったか?」

 桐野が、人ごみを縫って現れた。

 一瞬学生時代の桐野と重なって見えてしまう。そんな幻覚から奈央は我に返って、慌てて笑顔を作った。


「ううん、待ってないよ。私も今来たところなの」


(桐野君、何年も見ないうちに人って変わるんだな……いつまでも変わらないのは私だけか)
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