恋のレシピの作り方
 振り切ったはずの学生の頃の回想と幻覚が再び奈央の脳裏を過ぎった。

 まだ、お互いに若気のいたりも許されるような年だったあの頃―――。

 けれど、今、自分の目の前にいる桐野は、パリっとスーツを着こなして、立派に社会人だ。


(なんだか、かっこよくなっちゃったな)

 左の薬指に光る指輪に、世帯を持っている人なんだと改めて実感させられてしまう。
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