恋のレシピの作り方
「オーナーシェフの一条さんは、キッチンは戦場だ、従業員は戦士だって言うの、面白いでしょ」

 奈央は、厨房で怒鳴り散らしている一条を思い出して、クスリと笑った。

「私はみんなより年上だから、みんなの事、ダメなところはダメで咎めるし、いいところは逆に伸ばしていってあげたい」

「一条さんって人、怖いの?」

 桐野が声を潜めて遠慮がちに奈央に囁いた。

「うん、ものすごく……怖いっていうよりも、厳しい人かな」

 奈央は笑いながら言うと、ワイングラス片手に最後の一口を飲み干した。


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