【短編】『Sweet Dentist番外編』Anniversary

10月7日

早朝、まだ暗いうちにあたしは簡単に荷物をまとめて部屋を出た。

大きなものや細かい荷物は日を改めて誠の仕事に出ている時に取りに来よう。

部屋を出て静かにカギをかける。

結局、誠から『結婚』の二文字は出てこなかったし、カレンダーの赤丸の意味も気付かなかったようだった。

シャワーから出てきたあたしの目が、少し赤かった事も気付かなかったみたい。

付き合う前や付き合いだした頃ならすぐに気付いてくれたと思う僅かなあたしの変化。

誠はそんなあたしの発信する警告に何の関心も示さずに気付かぬまま
「俺、もう寝るわ。」
と言って、さっさと布団に入ってしまった。

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