死神と私
視界が一気にグラリと傾く。

ずっと寝ていないから…こんなヘンなもの見ちゃうんだよ…。

早く寝ないと…ダメだな…。

そう…こんな死神なんて幻なんだよ…。

そう思って寝ようと毛布を手にしたとたん死神はまた毛布を奪い取った。

「何…すんの?」

「きちんと人の話を聞け…いいか?じゃないと本当に魂を狩るぞ」

大きく鋭くとがった鎌を水香に向けながら真剣な表情でいう死神。

「…脅しじゃん…分かった…聞くよ」

死神はふぅ…と安堵したようにため息をついた。

「俺は半年前…ボスからお前の前彼氏,風谷亮を殺せと命じられた。だが俺は最初ためらった。初めての仕事だったんだ。だがやはり…死神も元は人間だ。生き物の魂を狩るなんてそんな容易いことじゃない」

「じゃあ…なんで…なん・・でっ…なんで・・りょ・・・ぉを…殺したの?」

水香はいつの間にか泣きながら死神の胸倉をつかんでいう。

「仕方なかった…あいつの魂を狩らなければ俺は仕事放棄したと見られてボスに殺されるか…食われるかだったんだよ・・・・」

そう言って軽く水香の事を抱きしめる和也。


暖かい・・・・。


死神なのに…体温はこんなにも人間と同じだ…。


思わず自分も抱きしめ返した。



切なくなる。


だって亮もこういうときに…死神と同じような抱きしめ方をしていたから。


いつまでたっても忘れられない亮との思い出。


未練ましい自分が嫌になってきた。


もう亡くなったものは…戻ってこないんだから。


ピピ―!


「え?」

「あ・・・」


突然鳴り出す音。

聞こえた場所は死神の腕からだった。


「な・・・・に?」


「時間が来た…どうすればいいんだ…俺・・・・君を殺さないと俺は食われ殺される…あ,あの手があったか・・・・」

「あの手?」



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