夢の外へ
おお、紳士。

一連の仕草に、私は思わず感心してしまった。

「せっかくですから、お話しませんか?」

微笑みながらそう言った彼に、
「あ、はい」

私は迷うことなく首を縦に振ってうなずいた。

ワインとつまめる程度の料理を更に盛って、2人一緒にテラスを出る。

料理の皿をテーブルに置くと、私たちは椅子に座った。

「初めまして。

冷牟田千景(ヒヤムタチカゲ)と申します」

彼――冷牟田さんは自分の名前を言うと、私に名刺を渡してきた。

えっ、名刺持ってるの?

驚いた私に、
「すみません、ついクセで」

冷牟田さんは照れくさそうに笑いながら答えた。
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