夢の外へ
「…えっ?」

その動作に、私は訳がわからなかった。

「――千景…?」

彼が私の手をつかんでいたからだ。

私が名前を呼んだことに千景はハッと我に返ると、
「――ああ、ごめん」

つかんでいたその手を離した。

一体どうしたんだろう。

私の頭の中を読んだのか、
「帰らせたくないって、一瞬思った」

千景がそんなことを言った。

「何やってんだろうな。

今すごく名残惜しいって思った」

千景がハハッと乾いた声を出して笑った。

「忘れてないから」
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