夢の外へ
後ろ姿だけで、“あかり”さんの顔はよく見えなかった。

その人は隣にいた男の人と腕を組むと、早足でどこかへ行ってしまった。

その人の後ろ姿を見ている千景に、
「――千景…?」

私が名前を呼んでも、彼の視線はすでにいなくなってしまった彼女に向けられたままだった。

放心状態な彼の顔が何だか情けない。

せっかくのイケメンが台無しだ。

「千景!」

強い口調で名前を呼んだら、
「――お、おっ?」

何を意味不明なことを言っているんだろう。

「早く行こ?

私、今日はイタリアンがいい」

未だに上の空状態を続けている千景に、私は声をかけた。

「ああ、わかった。

イタリアンな」

千景は歩き出した。

――気にしない。

別に、千景の勝手じゃん?

彼にどう言う事情があろうと、私には関係ないじゃん。
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