『若恋』短編集2




「龍桜」


呼ぶと振り向いた。


半泣きで振り向いた女が目を擦りながら小首を傾げた。


―――ああ


いい名前だな。
ぴったりじゃねえか。


「おまえの名前だ」


女の名前なんてどうやってつけたらいいかわかんねぇが、この女にはその名前が一番似合う。



「昇り龍に、桜」

「……わたしの名前?」


半泣きだった女が俺を見る。


「ああ、いい名前だろ。龍桜」

「……龍桜」


何度も呟くうちに、龍桜の口の端が上がる。


「わたしの、名前」



泣きべそをかいていた顔が子供のように嬉しそうな表情に変わった。


ああ、俺が言うのもなんだが、こいつにはぴったりじゃねえか。
本当の名前は知らねえが、今のこいつにはその名が似合う。



―――おまえに似合う





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