『若恋』短編集2




「龍桜」

「はい」

「俺が野菜の皮剥きから教えてやる」

「え?」

「だから、俺が皮剥きから教えてやるって言ってんだ」

「え?」


だからな。
おまえひとりじゃ危なっかしいってんだ。一緒に作りゃまともな食い物にはなるだろ?


一瞬、きょとんとした目をしたがまたすぐに破顔した。


「うん!」





やれやれ。
先が思いやられるな。




「まあ、いっか」

なんだかんだ言っても、
拾ったこいつが嫌いじゃない。
世間知らずが可愛い気さえする。




「龍桜」

名付けたら尚更だ。




「龍桜、包丁ってのは右手に持つもんだ」

まずはそこからだ。




やれやれ。






【龍桜・完】


< 6 / 17 >

この作品をシェア

pagetop