『若恋』短編集2
「龍桜」
「はい」
「俺が野菜の皮剥きから教えてやる」
「え?」
「だから、俺が皮剥きから教えてやるって言ってんだ」
「え?」
だからな。
おまえひとりじゃ危なっかしいってんだ。一緒に作りゃまともな食い物にはなるだろ?
一瞬、きょとんとした目をしたがまたすぐに破顔した。
「うん!」
やれやれ。
先が思いやられるな。
「まあ、いっか」
なんだかんだ言っても、
拾ったこいつが嫌いじゃない。
世間知らずが可愛い気さえする。
「龍桜」
名付けたら尚更だ。
「龍桜、包丁ってのは右手に持つもんだ」
まずはそこからだ。
やれやれ。
【龍桜・完】