君をいただくなんてできない
「どこが平気なの、いいからはようこっち来て」
ガシッと手首を掴まれて引き寄せられる。う、わわっ……!
「だだだ、大丈夫ですって!離して下さいっ!!!」
「そないに抵抗されるとその可愛くて煩い唇、塞ぎたくなってまう」
ニヤリ、狼さんは素性を露にする。ひぃいいいいいい!!!これが本性!!!!
一気に血の気が引いたあたしは、もはや成す術なし。ぐったりとしながらこの悪魔みたいな狼さんに身を任せるしかなかった。
「お、……お願いします」
「うん、任しといて」
どこから出したのか、狼さんは包帯を取り出して手際良くあたしの指先に巻きつけていく。
痛くないやろか?と、気遣いまでしてくれる。……何だか、調子狂っちゃうな。
「これでええやろ。お家着いたら、ちゃんと消毒するんやで?」
「あ、ありがとう……」
丁寧に手当てされた指先を見る。すっかり痛みは消えた。
「お大事にな」
「っ……」