君をいただくなんてできない
あれ……、何今の胸のときめきは。
「……」
「どないしてん、まだ痛いか?」
狼さんに顔を覗きこまれてハッとする。顔!!!顔近い!!!!
「ぎゃあっ!!」
「なんやねんその反応、傷付くわー」
獣耳をしょんぼり下げてあからさまに落ち込んだ顔をする。
なんか、なんか、可愛いっ……!
「あの、その、狼さん」
「ん?なんやお嬢さん」
…………お嬢さん。
「あたし赤ずきんって言うの、ほらこれ」
被ってる赤の頭巾を指差しながら、自分の名前を主張してみる。
「ええ頭巾やな、“お嬢さん”」
「~~~っ!!!」
この狼さん、意外と意地悪。あたしの気持ち分かってるくせに!!
「なんやその不服そうな顔。ほんまかわええな」
「からかわないで下さい!」
この人といると調子狂う。さっさと離れないと。