君をいただくなんてできない


くるり後ろを向いてずんずんと歩き出す。早く薬をおばあちゃんのお家まで持って行かないと。





「どこ行くねん」



「ぅわっ……!」




腕を引かれ転びそうになる。後ろに傾いた身体はポスッと狼さんの腕の中に閉じ込められてしまった。


「やっ、ちょっと……何するんですか!?」




「逃げようとするからやん」


ジタバタもがいても、腕に力を込められびくともしない。




「逃げてるんじゃありません!あたし忙しいんですってば!」




狼さんは至極不機嫌そうな顔であたしを見下ろす。怖い怖い怖い!!!






「忙しい、ねぇ……」



ふーん、と興味なさげに呟くものの、腕の力は一向に緩まる気配がない。



「おばあちゃんが待ってるんですから、離して下さい!」





「嫌、言うたら……どうするん?」


え。




一瞬だけ解放されたと思ったら、クルリ身体の向きを変えられて狼さんと向き合う形になる。見上げれば意地悪に笑うドSと目が合った。



「……言わないで下さい」





「嫌」



どうやらこの狼さん、もの凄くタチが悪いみたいです。




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