君をいただくなんてできない
食べる気がないなんて嘘に決まってる
こうなったらもう強行突破するしかない。
「とにかく……あたしはもう行きますんで、さよなら!!!」
「ぼふっ」
さっき摘んだ花束を狼さんの顔に思いっ切りぶつけてやった。そりゃあもう、力一杯込めて。
「ひいっごめんなさいいいい!!!」
捕まったら食べられる。捕まったら死ぬ。死ぬ気で逃げねば殺される!
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無我夢中で走った。途中で何度も転んで服がぼろぼろになった。それでもあたしは、走ることをやめなかった。
「はぁっ……は、」
気が付くと、目の前に見覚えのある家。
紛れもない、おばあちゃんの家だった。
「……っ着いた!!」
後ろを振り返っても誰の気配もしない。あたしは安堵のため息をついた。
「助かった……っ」