君をいただくなんてできない
グイと流れ落ちる汗を拭いてから、あたしは木の扉に手を掛ける。
ギィイイ、古びた音を鳴り響かせながら扉が開いた。
「おばあちゃ……」
元気に挨拶して、それからおばあちゃんの胸に飛び込むはずだった。
よしよしって、いつもみたいに頭を撫でてもらうはずだった。
その全ての期待が、目の前の光景によって絶望に変わる。
「グルルル……」
「っ!!!?」
部屋の中にいたのはおばあちゃんだけじゃなかった。
―――狼。
「お、おばあちゃん……!」
「赤ずきん!なにやってるんだい、早くお逃げ!」
狼があたしとおばあちゃんの間で威嚇を続ける。にじり、狼が一歩おばあちゃんに近付いた。