君をいただくなんてできない
もしかして、さっきの狼なの……?あたしがあんなことして逃げたから、怒ってる?
今は元の狼の姿だから見分けがつかないけど、きっとそうに決まってる。
「さ、さっきは本当にごめんなさい……!あたしただ急いでただけで悪気はなかった、の、」
ギラリ。狼の鋭い瞳があたしを捕らえた。
それだけであたしの身体は硬直し、何も考えられなくなってしまう。
「……グルルル」
「赤ずきん!!お願いだから逃げて!!!」
ポロポロと涙を流すあたしにおばあちゃんが叫ぶ。その声を聞いて、あたしはハッとした。
おばあちゃんを逃がさなくちゃ……!
固まっていた身体が弾かれるように動いた。足が悪いおばあちゃんを逃がすことが、最優先でやらなくちゃいけないこと。