君をいただくなんてできない
「おばあちゃん、こっち!」
あたしは横目で狼の姿を視界に入れながらおばあちゃんの手を引っ張った。
この家には貯蔵に使ってる地下室がある。中から鍵を掛けられるから、そこなら安心のはず。
「グルルルッ!!」
「ひっ……!」
動き出したあたしたちと同時に、狼も動く。
すぐには飛び掛からない。あたしたちが怖がるのを楽しむように弄ぶ。
「おばあちゃん、ここ!早く入って!!」
「赤ずきん、お前はどうする気だい!?」
おばあちゃんが声を震わせる。
あの狼がさっきの人なら、話せば分かってくれるはず。
「わたしなら大丈夫!心配しないで」
おばあちゃんの制止を無視して扉を閉める。
しばらく中からあたしを呼ぶ声が聞こえたけど、やがてガチャリ鍵の閉まる音がした。