君をいただくなんてできない
ほ、と短い息を吐いたのも束の間。
「ひあっ……!?」
ベロリ背中を舐め上げられ、ゾワゾワッと鳥肌が立つ。
気が付けば狼は尋常じゃないほどの距離にいて。ばっちり目が合ってしまった。
「ガルルル……」
「あ、あの、本当に申し訳ないと思ってます……!と、とりあえず落ち着いて話しませんか?」
両手を床について頭を下げる。きっと許してくれるって、頭の片隅で信じてた。
でも目の前の猛獣は威嚇をやめない。ゆらり、フンと鼻を鳴らしながらあたしに近付く。
……嘘でしょ……?
あたし、食べられちゃうの?死んじゃうの?
やだ……やだよ……。
「おっ、お願い!許して……っ!」
あたしが泣いて許しを請うのと同時に、狼は今度こそあたしに飛び掛かってきた。
「―――っ!!!」