君をいただくなんてできない


「あかんなぁハルちゃん、この娘は僕のものやで」



ふわり、赤頭巾が宙に舞い上がる。それを見届けるあたし自身も、宙に浮かんでる感覚に陥った。





「お気に入り取られると駄々捏ねるタイプやねん。堪忍してや」




彼はあたしを後ろから抱き締めていて。グイと引き寄せられていることに気付く。




後ろを振り向けば彼の顔が視界に入る。あたしはもう一度、威嚇を続けながらも襲ってくる気配を見せない狼に視線を移した。




「怖かったやろ?もう大丈夫やから」






違ったんだ……彼じゃなかった。



ぎゅうと抱き締められることを実感して、それと同時に安心感があたしを包む。






「ふぇ……っ、」



堪えきれない涙が溢れる。怖かった。……助けに来てくれて、嬉しかった。




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