君をいただくなんてできない
「……ハルちゃん、何してんねん。女の子泣かすなんて最低やぞ」
「…………うるさい。俺はただ飢えた腹を満たそうとしただけだ」
……え、?
思わず涙が引っ込んでしまう。だって。
「ダメや。この娘を泣かすことだけは俺が許さへん」
「お前に何の権利があるんだ。人間なんてみんな同じだろ」
さっきあたしのことを食べようとした狼はすっかり姿を消して、代わりに今あたしが見ているのは二人の男の人。
つまり、信じられないけど、……。
「二人とも、……元は狼さんってこと、ですか……?」
そうとしか考えられない。だって今ここに、あの恐ろしい狼はいないんだから。
「そやで。こいつはハル。俺はコウ。自己紹介が遅れてしもた」