君をいただくなんてできない
「ぁ、……っ」
声が出ない、出せない。
逃げろ。頭は危険信号を鳴らしてるのに身体が動かない。
殺される。
「あの、お嬢さ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!お願いします食べないで下さい!!許して下さい!!!」
開いた口の中から牙がこんにちはするのを見て、あたしはひたすら頭を下げた。
あれに噛まれたら一溜まりもない。
「あたしなんか食べても美味しくないですから!!むしろお腹壊しちゃいますからあああ!!!」
とにかく一瞬でも隙をつくって逃げなきゃ。
「……この姿じゃ、まともに話もでけへんね」
「ごめんなさいごめんなさ―――……え?」
あれ……?