君をいただくなんてできない
「とにかく、僕は君を食べたりせんから安心して。……今のとこは、やけど」
含み笑いを浮かべながら、ぐいっ、すっかり腰の抜けたあたしの手を引いて立たせる。
どう見ても人間だよね、その耳以外は。
「それで、お嬢さんはこないなとこで何してるの?この森は危険がいっぱいやで」
「お、おばあちゃんに薬を届けに行くの」
今は人間の姿をしてるけど、もしかしたら油断させようとしてるだけかもしれない。
あたしが気を抜いた隙に食べちゃうつもりなのかも。
「おばあちゃん、か。偉いな」
いい子いい子と頭を撫でられる。子供扱いされてるみたいでちょっとむかつく……。
「別に偉くなんてないです。ていうか、あなたこそ何してるんですか」