君をいただくなんてできない
「ていうか。さっきからそれ、気になってたんやけど」
「え?」
彼が指す方向に視線を移すと、あたしの指先にたどり着く。
「あ、」
血が、血が。
さっき切った指先から血が流れ出て、地面にポタポタ垂れていた。
切ったことを思い出した途端、急に痛みが走る。こんなに深く切っちゃってたなんて。
「っ……」
「やっぱり痛いよなぁ。ほら、おいで」
「え!?」
狼がこっちにくるよう手招きしてる。まるで死神が迎えにきたかの如く。
あたしは指先を押さえながらブンブン首を横に振った。
「手当てするだけやから」
「いっ、いえ、結構です!全然平気ですから!」
地面に落ちた鮮血が水溜まりをつくってるけどそんなこと気にしない。食べられるよりましだ。