君と私のsubtext
「おいこら、全体会始めるぞ」

「うげっ、会長いんじゃん」

「かいちょー、存在感ありませーんっ」

「うっさいわ、岸にかなう奴なんかそうそういねぇだろっ」

「あははは」


会長のわめく声が、私の意識を引き戻す。

なんであの時のことなんか思い出してるんだろう。


もう、何年も前も。

ついた傷すら跡を残さず消えるくらい、昔の話なのに。


記憶の底に深くこびりついてしまった言葉は、その時の痛みを忘れてしまっても、勝手に浮かんでくるらしい。なんて質が悪いんだろう。



「席つこっ」


戻ってきた笑顔のゆうが、近くの机に荷物を置いて椅子を引き寄せる。
私はその隣に座る。

K先輩たちは、空間の扉付近で、私と対角線上くらいの位置になる。

黒板に近い方にいる私は、振り向かない限りその集団は見えない。


「はい、静かにー。我らがサークルの夏の合宿――という名の交流会の詳細と、参加確認が本日のメインだ。今からプリント回すから、確認しろよー。あと、休みの奴にはメールまわしといてな。返事は今週まで、待ってやる」

「会長えらそーでーす」

「ひやかし、やめぃっ」


最前列にいた私に、プリントの束が渡される。

頭に夏の合宿と題があって、日程と費用、場所――など色々書いてある。

ゆうの分をとって後ろに回し、ななめ読みしてプリントを置く。


「今年は海だってっ」

「どうする?参加する?」


空間のあちこちがにぎやかになる。


楽しそうでいいね。


私は窓の外を見る。

少し赤い、空。
< 4 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop