君と私のsubtext
「え、岸君?」


「佐伯と帰る方向同じだし、傘貸してもらえればこのまま帰るわ」


「え、平気なの?雨まだ酷いんじゃないの?」


「途中でタクシー拾うし。たまのぜーたく」



言いながら空中に浮くような心地がする。



実際、膝をすくわれてお姫様抱っこの状態だったらしいけど、頭痛がひどくて正直その時はそれどころじゃなかった。



「手伝おうか?」


「佐伯軽いから、平気。レポートもあっし、このまま帰るわ」


「…そっか」



そんな会話がきこえて、次に気づいた時はタクシーの中だった。


あいつは、膝枕で私の頭を撫でてくれた。



「ばーか。調子悪い時くらい、バイト休めよ」



小言を言いながら、手つきはひどく優しかったのを感じる。



頭痛はひどかったけど、その感触は心地よかった――。
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