君と私のsubtext
「帰る」




「は――」

「迷惑かけて悪かったわね。ありがと」



あいつが口をはさめないように言葉を続けて、立ち上がる。


荷物を片手に入口の方へ足を向ける。



「ちょっと待て、佐伯「じゃあ帰ります、さようなら岸先輩」



素早く足を踏み出す。





これ以上ここにいたくない。


昔のことなんて、これ以上思い出したくない。ただ、頭が痛くなるだけだ。







なのに――。







「ちぃっ」





私の腕をつかんで引き留め、あいつが昔みたいにそう私を呼ぶ。



それだけで、頭より先に心が脈打つ。


過剰反応している体に、苛立つ。
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