君と私のsubtext
「佐伯、交流会行くの?」

「未定」

「何だそれ?」

「バイト空くかどうかわかんないし」

「そこは空けとけよ。ほら、みんなの憧れ、岸先輩も来るんだしさ」


言われなくても聞こえてたこと、本人が近くいるのに言うなよ。無神経。

ちらりと空間に目を向けると、岸先輩はみんなに囲まれて話していた。


あんだけ騒がしければ、廊下の話など、きこえない、か。


「それに、お前滅多に顔ださねぇんだから、たまには出してもいいじゃん。来年はまだいいけど、再来年なんて俺たち四年だぜ?就活終わってっか、びみょー」


苦笑いでこたえる。

確かにその通り。
就職難の荒波は、未だ勢い劣れず。四年生の先輩の中には、内定決まっていない先輩方がちらほらいる。

実態を把握していないからそれが普通かどうかわからないけど、やっぱり自分の先行きは不安で仕方ない。

まあ、まだ先の話だから、今から悩んでも仕方ない。


ちら、と時計を確認して、そろそろ行かないとアウトな時間が迫っているのに気づく。


「じゃ、遅れるから」

「ん、頑張れよ」


手を振られたので、小さく振りかえして歩き出す。







「佐伯」









耳によくなじむ、低い声。
< 8 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop