夏虫
生徒会の会議で悠希はいなくて、他のふたりも追試があり、偶然が重なった。教室でひとりで弁当をつつくより、久々にいくつかあるサボりに使うとこに行こうと思ったのだった。
あたしは、今度のクラスの関係図を頭に歩いていた。いかに平凡に暮らすかというのが、あたしの最大の関心事。
とりあえず、眞鍋さんには関わりたくないなぁ。噂好きだから、下手に関わると後が面倒な気がする。
「あっ…、蒼井さん」
声がしたほうに振り返ると、一気に腕を掴まれ、今さっき開けた教室に連れ込まれた。
「えっ、あの…あさひ」
名前を確認する前に彼は質問で遮ってしまう。
「あれ、鍵あるの?」
貸して、と言われた気がして、なぜだかあたしの手は無意識に鍵を差し出した。さっと彼は鍵を取って、施錠してしまう。
このひと、なぜだか懐かしいような、不思議な心地よさを感じる。知り合いにでも似てるんだろうか。
「頼むから静かにしてて」
ちょっと事情は分からないけど、困っているひとを何だかんだ、ほっとけないのよね、私。
たとえ彼が有名な不良でも。それに多分、噂ほど怖いひとじゃないみたいだし。
あたしは、彼の手を繋ぎなおして、いつもの隠れ場所にひっぱっていった。
あたしは、今度のクラスの関係図を頭に歩いていた。いかに平凡に暮らすかというのが、あたしの最大の関心事。
とりあえず、眞鍋さんには関わりたくないなぁ。噂好きだから、下手に関わると後が面倒な気がする。
「あっ…、蒼井さん」
声がしたほうに振り返ると、一気に腕を掴まれ、今さっき開けた教室に連れ込まれた。
「えっ、あの…あさひ」
名前を確認する前に彼は質問で遮ってしまう。
「あれ、鍵あるの?」
貸して、と言われた気がして、なぜだかあたしの手は無意識に鍵を差し出した。さっと彼は鍵を取って、施錠してしまう。
このひと、なぜだか懐かしいような、不思議な心地よさを感じる。知り合いにでも似てるんだろうか。
「頼むから静かにしてて」
ちょっと事情は分からないけど、困っているひとを何だかんだ、ほっとけないのよね、私。
たとえ彼が有名な不良でも。それに多分、噂ほど怖いひとじゃないみたいだし。
あたしは、彼の手を繋ぎなおして、いつもの隠れ場所にひっぱっていった。